退職金がある年のふるさと納税【2026年中の寄附・解説】
退職金(退職所得)は、ふるさと納税の上限額を増やしません。上限額は、その年の給与など「退職金以外の所得」だけで決まります。退職した年は所得が減ることが多いので、上限額も例年より小さくなるのがふつうです。
なぜ退職金は上限額に入らないのか
- 住民税は「現年分離課税」。退職金にかかる住民税は、支払いのときに他の所得と分けて天引き(特別徴収)され、それで終わります。翌年度の住民税(前年の所得にかかる所得割)には入りません(地方税法 第50条の2・第328条)。
- 上限額の基礎は「所得割の額の20%」。ふるさと納税の特例控除額は、住民税の所得割の額の20%が上限です(地方税法 第37条の2第11項・第314条の7第11項)。この「所得割の額」は前年の所得にかかる所得割(第314条の3・第314条の6を適用した額)で、現年分離課税の退職金の分は含まれません。
- 所得税も他の所得と分けて課税。退職所得は、課税総所得金額(給与など)とは別に税率を当てます(所得税法 第30条・第89条第1項)。上限額の計算に使う所得税率は課税総所得金額の税率で決まるので、退職金で税率が上がることはありません。寄附金控除は、まず総所得金額から引きます(所得税法 第87条第2項)。
退職した年の上限額は何で決まるか
- 1月から退職までの給与(賞与を含む)。
- 退職後の収入。雇用保険の失業給付は非課税なので、所得に入りません。
- 退職後に自分で払った国民健康保険料・国民年金保険料(社会保険料控除)。これらは所得を減らすので、上限額も下がります。
- 前年の住民税の決定通知書の数字は、退職の年には使えません(前年は通常の年の所得だからです)。その年の見込みの所得で計算してください。
退職後に国民健康保険に入った方は、自営業・国保加入者の上限額のページで、その年の所得から国保料と国民年金を自動計算して上限額を出せます(給与は「事業所得」の欄に、給与所得控除後の金額を入れてください)。
退職所得の計算(確認用)
勤続25年・退職金1,500万円の場合(所得税法 第30条第2項・第3項)
退職所得控除額800万円 + 70万円 × 5年 = 1,150万円
退職所得の金額(1,500万円 − 1,150万円)× 1/2 = 175万円
この175万円は、所得税も住民税も他の所得と分けて課税され、ふるさと納税の上限額の計算には入りません。
注意
・勤務先に「退職所得の受給に関する申告書」を出さなかった場合は、退職金の20.42%が源泉徴収されます。確定申告で精算できますが(国税庁 タックスアンサー No.1420)、精算しても住民税の現年分離課税は変わらず、上限額にも影響しません。
・退職金にかかった住民税(現年分離課税の分)からは、ふるさと納税の控除は引かれません。控除は翌年度の所得割からだけです(地方税法 第314条の7第1項)。
・退職金が5年以下の短期勤続や役員のものである場合は、退職所得の金額の計算が異なります(所得税法 第30条第2項・第4項・第5項)。上限額に入らない点は同じです。
・源泉徴収されない退職手当等(海外の勤務先から受けるものなど)は、翌年度の住民税の対象になり、扱いが変わります(地方税法 第314条の7第11項第3号・附則第5条の5第2項)。この記事では扱いません。
翌年のふるさと納税
翌年の上限額は、翌年の所得で決まります。退職後に収入が年金や失業給付だけになると、所得割がほとんど無くなり、自己負担2,000円で済む寄附額はごく小さくなります。年金収入の方は、年金から公的年金等控除を引いた所得で上限額を見積もってください。
自己負担2,000円で済む寄附の上限額を計算する →
自営業・国保加入者の上限額(国保料を自動計算)→
ワンストップ特例か確定申告か、3問で判定する →
※2026年中の寄附(所得税は令和8年分・住民税は令和9年度分)の制度で説明しています。
※この記事は制度の仕組みの説明で、個別の税額の計算や申告の代行ではありません。金額は各自の源泉徴収票・通知書で確かめてください。
※出典:地方税法 第50条の2・第328条(退職所得の課税の特例)、第37条の2第11項・第314条の7第1項・第11項(寄附金税額控除・特例控除額の上限)、附則第5条の5(分離課税がある場合の特例控除額)、所得税法 第30条(退職所得)・第87条第2項(所得控除の順序)・第89条第1項(税率)(いずれも e-Gov 法令検索・2026年10月16日取得の現行版)、国税庁 タックスアンサー No.1420。
寄附の申込み先(例)
寄附は、各ポータルサイトや自治体の窓口から申し込めます。五十音順。
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